top of page

GHOST TEETH

 

わざわいを、わざわいを、
音もなく 噛み砕くの。
だから、僕は 黙って いるんだよ。
涙ごと、なにもかも、
飲み込んで 微笑み 浮かべるの。
今、は。

 

もう、手遅れ、だよ。
うつむいた花は、戻らない。

 

その、真っ赤な くちびるから 咲いた ばら
その、するどい とげ は 
どこに  つきささる?

 

わざわいを、わざわいを、
音もなく 噛み砕くの。
だから、 僕は 黙って いるんだよ。
こみ上げる わらいさえ
飲み込んで 良い子をしているの。
ほら、ね。

 

 

もう、今更、だよ。
取り返せるものも、ないよ。

 

その、とがった 声の色と飛んだ 矢を
また、誰かが 拾いあげて 
あそぶ、から。

 

わざわいを、わざわいを、
音もなく 噛み砕くの。
だから、僕は 黙って いるんだよ。
涙ごと、わらいさえ、
飲み込んで 佇んでいるの。
未だ。

 

もう、僕にも 誰にも、届かない… 
ああ。

 

 

「すき」
「きらい」
「そばにいて」
「いなくなれ」

 

ちがう!

 

どうして、

 

言葉にするほど 想いまで こわれるなら、

 

色のない、くちびるを
噛みながら
あかつき を、待って いよう。

今、は…

 

bottom of page